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歯の知識

虫歯を放置すると命に関わることも?知られざる危険性

親子三代で安心して通える歯医者、船橋市のあおぞら歯科クリニック本院です。

皆さん、虫歯を放置するとどうなるかご存じでしょうか?「痛みがなくなったから大丈夫」と思って放置してしまう患者様もいらっしゃいますが、実は虫歯は自然に治ることはなく、進行すると歯の神経や周囲の組織、さらには全身に悪影響を及ぼすこともあります。

当院では、患者様の大切な歯を守るために早期発見・早期治療を大切にしています。今回は虫歯を放置することで起こり得る危険性についてお伝えします。この記事が皆様の参考になれば幸いです。

■虫歯を放置することで起こる口腔内の変化

虫歯は一度発生すると自然に治ることはなく、放置すれば確実に進行していきます。その進行過程は段階的であり、初期の小さな変化からやがて歯の根や周囲の骨にまで影響を及ぼすようになります。ここでは、虫歯を放置した際に口の中で起こる変化について詳しく解説します。

・初期段階:歯の表面に現れる小さなサイン

虫歯の始まりは、歯の表面にできる小さな白濁や黒い点です。これは歯のエナメル質が酸によって溶かされ始めたサインで、痛みを伴わないことが多いため患者様が気づきにくい状態です。この段階であればフッ素塗布や正しいブラッシング指導により進行を食い止められる可能性がありますが、放置すると次の段階へと進んでしまいます。

・中期段階:冷たいものや甘いものがしみる

虫歯がエナメル質を越えて象牙質に達すると、知覚過敏のように冷たいものや甘いものがしみるようになります。この段階になると歯の再生は不可能であり、削って詰め物をする治療が必要です。痛みがまだ軽度なため「そのうち治まる」と考えて放置する患者様も少なくありませんが、症状が一時的に軽くなったとしても内部では確実に進行しています。

・進行段階:強い痛みと神経への影響

さらに放置を続けると、虫歯は歯の中心にある神経(歯髄)へ達します。歯髄炎と呼ばれる状態になると、強烈な痛みを伴い、夜も眠れないほどの激痛に悩まされることもあります。炎症が進むと神経が死んでしまい、痛みが一時的に消えることがありますが、これは決して良くなったわけではなく、むしろさらに深刻な段階へ移行している証拠です。この時点では神経を除去する根管治療が必要になり、治療期間も長くなります。

・歯の崩壊と噛む機能の喪失

神経が失われた歯は栄養供給が絶たれ、もろくなっていきます。やがて歯の大部分が崩壊し、噛む力が著しく低下します。歯を失うと隣の歯が傾いたり噛み合わせが乱れたりするため、口腔内全体のバランスにも悪影響が及びます。噛む機能が低下すると食事の満足度が下がるだけでなく、栄養状態や消化機能にも影響を与える可能性があります。

・歯根への感染と膿の形成

虫歯をさらに放置すると、細菌は歯の根へと到達し、歯根の先に膿がたまります。歯茎が腫れたり、押すと強い痛みを感じたりする状態になり、発熱や顔の腫れを伴うこともあります。これは「歯根嚢胞」や「根尖性歯周炎」と呼ばれる病態であり、治療が遅れると抜歯が必要になることもあります。当院にも、歯の腫れや強い痛みで来院される患者様が多くいらっしゃいますが、その多くが「もっと早く受診していればよかった」とおっしゃいます。

・他の歯や口腔全体への影響

1本の歯の虫歯を放置することで、周囲の歯や口腔全体にも悪影響が及びます。虫歯菌は唾液を通じて他の歯に感染する可能性があり、虫歯が多発する原因になります。また、噛む位置が偏ることで顎関節に負担がかかり、顎関節症や頭痛などを引き起こすこともあります。さらに、口臭の原因にもなり、日常生活に支障をきたす場合も少なくありません。

・心身への影響と生活の質の低下

口腔内の痛みや不快感は食事や会話など日常生活の質を大きく下げます。好きなものを自由に食べられない、話をするときに口臭が気になる、痛みで集中力が続かないなど、患者様の生活全般に影響を及ぼします。特に高齢の方では噛む力の低下が認知症のリスクを高めるとされており、虫歯の放置は単なる歯の問題にとどまらず、全身の健康や精神的な安定にまで関わる重大な問題といえます。

・虫歯は放置しても治らない

多くの患者様が「痛みがなくなったからもう大丈夫」と思われがちですが、虫歯が自然に治ることは決してありません。痛みが一時的に収まるのは、神経が死んでしまった結果であり、その先には歯の崩壊や感染の拡大が待っています。歯を守るためには、早めに受診し、適切な治療を受けることが唯一の方法です。

■虫歯が全身に及ぼす深刻なリスク

虫歯は口の中の問題と考えられがちですが、実際には全身の健康に大きな影響を与える可能性があります。特に、虫歯を放置して細菌感染が進行すると、血流や呼吸を介して体の各所に広がり、命に関わる病気を引き起こす危険性があります。当院にも、虫歯を長期間放置した結果、全身に影響を及ぼした患者様が来院されることがあり、その恐ろしさを実感しています。ここでは、虫歯が引き金となって起こり得る全身へのリスクについて詳しく説明します。

・細菌感染が心臓に及ぶリスク

虫歯を放置すると、歯の根に膿がたまることがあります。この状態が続くと、細菌が血管に侵入し、血液を介して全身に巡ることがあります。特に心臓に感染が及ぶと「感染性心内膜炎」と呼ばれる病気を発症する危険性があります。感染性心内膜炎は心臓の内膜や弁に細菌が付着して炎症を起こす疾患で、高熱や倦怠感を伴い、重症化すると心不全に進行することもあります。基礎疾患を持つ方や高齢の患者様では発症リスクが高まり、命に直結する重大な合併症につながる可能性があります。

・誤嚥性肺炎との関わり

高齢者に多い病気の一つに誤嚥性肺炎があります。これは、口腔内の細菌が唾液や食べ物とともに気管へ入り込み、肺で炎症を起こす病気です。虫歯を放置すると口腔内の細菌数が増え、誤嚥性肺炎のリスクが飛躍的に高まります。特に介護が必要な高齢の患者様や、嚥下機能が低下している方にとっては大きな問題です。当院でも訪問診療を通じて、虫歯や歯周病を放置したことが誤嚥性肺炎のきっかけになっている事例を多く目にします。

・糖尿病との相互関係

虫歯や歯周病の炎症は糖尿病の悪化とも密接に関連しています。口腔内で細菌感染が慢性的に続くと、全身に炎症性物質が放出され、インスリンの働きを妨げることで血糖コントロールを悪化させるとされています。逆に糖尿病の患者様は免疫力が低下しているため、虫歯や歯周病が進行しやすく、悪循環を引き起こします。つまり、虫歯の放置は糖尿病の進行を助長し、糖尿病は虫歯の治癒を妨げるという関係があるのです。

・脳や血管への影響

細菌が血管内に侵入して炎症を起こすと、動脈硬化を促進することがあります。動脈硬化は脳梗塞や心筋梗塞の大きな要因であり、突然の発作を引き起こすリスクを高めます。近年の研究では、虫歯や歯周病が脳卒中のリスク因子になることが報告されており、決して無視できない関係です。特に働き盛りの世代にとっては、生活習慣病とあわせて大きなリスク要因となります。

・妊娠中の母体と胎児への影響

妊娠中の女性が虫歯を放置すると、母体だけでなく胎児にも悪影響を及ぼす可能性があります。炎症や感染によって子宮収縮が起こりやすくなり、早産や低体重児出産のリスクが高まるといわれています。また、母親の口腔内の細菌は生まれてくる子どもに感染することがあり、将来的に虫歯のリスクを高めてしまうことも知られています。母子の健康を守るためにも、妊娠中の口腔管理は非常に重要です。

・免疫力低下と全身疲労

虫歯を放置して慢性的な炎症が続くと、体の免疫システムに負担をかけます。免疫力が低下することで風邪をひきやすくなったり、傷の治りが遅くなったりすることもあります。また、炎症反応によって体が常に戦っている状態となり、倦怠感や集中力の低下など全身の疲労感につながります。虫歯の放置が「なんとなく体調が優れない」原因となっているケースも少なくありません。

・高齢者の生活の質の低下

高齢の患者様では、虫歯を放置することで噛む力が低下し、十分に食事を摂取できなくなることがあります。これにより栄養不足に陥り、体力の低下や認知機能の衰えを加速させる恐れがあります。さらに、口腔内の不快感や痛みがうつ状態を招くこともあり、心身両面で生活の質を大きく下げてしまうのです。訪問診療の現場でも、虫歯や歯周病を長期間放置した結果、健康状態全般が悪化している事例をよく目にします。

・日常生活への広範な影響

虫歯を放置することによる影響は、病気だけにとどまりません。強い痛みや口臭のために人前で話すのを避けるようになり、仕事や人間関係に支障をきたすこともあります。会話や笑顔に自信を持てなくなると、患者様自身の心理的負担は大きく、社会的な活動に消極的になる傾向も見られます。

今回は、虫歯を放置するとどのような危険があるのかについて説明しました。虫歯は初期の小さなサインを見逃してしまうと、やがて強い痛みや歯の崩壊を招き、最終的には全身へ深刻な影響を及ぼす可能性があります。心臓や肺、血管、さらには妊娠中の母体や胎児にも関わることがあり、決して軽視できるものではありません。患者様の健康を守るためには、早期発見と適切な治療が欠かせません。あおぞら歯科クリニック本院では虫歯に関する相談を随時実施しておりますので、ぜひご相談ください。

この記事の編集担当は古橋淳一歯科医師です。